2011年07月01日
病気の正しい治し方について-その3
前回は、「アトピー性皮膚炎」を例にして、この治療で抗ヒスタミン剤は、あくまで対処療法の薬であり、アレルギーを起こさせないような根治を目指す薬ではないことを、お話ししました。アレルギーの出発点である、抗原(ハウスダストや、スギ花粉など)と結合する、「 IgE 」抗体そのものを減少させて、アレルギー反応そのものを起こりにくくさせることが目標であり、これを目指すことが、その正しい治療となります。
この観点から考えますと、ステロイド軟膏を使うことで、「アトピー性皮膚炎」の治療をしていると居直っている治療法が、「ごまかしの医療」であることが分ります。
そもそもアトピー病変の皮膚に、何故ステロイド軟膏を塗るのでしょうか?アレルギー反応が起こっている皮膚では、そのために、血液を介して修復ホルモンとして供給されている「グルコ・コルチコイド」(ステロイドのこと)が、どんどん消費されて不足している。だからステロイド軟膏を塗ることにより、不足している修復ホルモンである「グルコ・コルチコイド」を、局所的に投与して不足している修復ホルモンを補うというのが、アトピー性皮膚炎の治療法ということになり、これが、アトピー病変にステロイド軟膏を使う根拠になっています。
この論拠の「落とし穴」は、先ほどから述べてきたように、原因となるハウスダストやダニは供給がされ続けるものであるし、それに反応する「 IgE 」抗体も、生体内で消費されれば、また産生されて供給され続けることです。アトピー病変の皮膚で、修復ホルモンであるステロイドの投与により皮膚が修復されても、治った皮膚の部分で、またダニと IgE 抗体の複合体が形成されて、以前に述べたアレルギー反応の「河」が流れて、一連のアレルギー反応が起こり、患者さんは、病変部位が痒いので爪でひっかいて、アトピー病変の皮膚ができ、これにステロイド軟膏をまた塗って治そうとするという、「賽の河原に石を積む」という表現がぴったりの、無間地獄が出現します。ヨーロッパの表現を借りれば、アトピーという病気は、「鷹に肝臓をむしられるプロメテウス」、または「シジフォスの神話の、積み上げた岩山」といった表現が適切な、無間地獄の世界が起こっています。ステロイド軟膏をいくら塗り続けても、血液中に流れているダニと反応する「 IgE 」抗体は、減少しません。むしろ消費されることにより、反対に増加します。
では、このような無間地獄からどうすれば脱却できるのでしょうか? それは、初めに述べたように、アレルギーの出発点の、抗原・抗体複合体の形成を阻止して、減らすという点にあります。ダニやハウスダストと反応する「 IgE 」の量を減らして、可能ならばゼロにすれば、アレルギーから完全に脱却したことになります。これが不可能ならば、可能な限り減らして、激しいアレルギー反応を起こさせないで「なだめ込む」という戦略を取るしかありません。
このような戦略で治療することに成功しているのは、「古臭い」と思われている漢方の治療法だけなのです。漢方だけの治療しかしない先生方のところでは、残念ながらこんな話は聞けませんが、成功している治療内容で起こっていることは、ここで述べたようなことだと、考えています。
このような話を聞かれて、私が主張している「ステロイドによるアトピー性皮膚炎の治療」が、ごまかしの治療とでも呼べるという事を、ご理解いただけましたでしょうか?ステロイド治療も必要で、(なぜなら、ステロイドホルモンは修復ホルモンですから、外からの投与という軟膏療法として使わなければ、内在のステロイドホルモンを使っての皮膚の修復となり、長期にわたってステロイドを使用してきた患者さんでは、フィードバックシステムのためにステロイドの産性能が低下しているため、患者さん自身の副腎で、少ししかステロイドが産生されず、ために皮膚の修復が遅れることになります。)これに、漢方治療がプラスされて、初めて、治療が正しくなされるという事になります。
つまり、病気の正しい治療の仕方という事が、議論される必要があるということが、お分かりいただけたと思います。病気の治療の内容にまで立ち入って、はじめて、正しいかどうかがわかるわけですから、患者さんも、自分の病気については、勉強してみる必要があるという訳です。
次回はアトピー性皮膚炎に、免疫抑制剤である「プロトピック軟膏」を使うことが正しくない治療法(これは、ごまかしの治療法というのではなく、誤った治療法です。)であることを、議論しましょう。